サステナビリティ・ファッションを考える
ファッションウィークのシーズン到来です。ランウェイを歩く華やかな衣装を身にまとったモデルさんたちのようにアパレル業界は華やかな印象が強いかもしれません。しかし、鎌田安里紗さんの記事(2022年12月27日:未来につなぐ消費とは?鎌田安里紗さんと“エシカル消費”を考える)で取り上げたように、アパレル業界は生産者の労働環境や環境負荷など様々な課題を抱えています。今回はアパレル業界がどんな課題を抱えているのか、企業がどんな取り組みをしているのか、課題解決のために生活者はどんな取り組みができるのかを取り上げたいとおもいます。
アパレル業界が抱えるさまざまな課題
生産、製造現場が抱える環境負荷、人権問題
アパレル業界はグローバルに分業化され、長く複雑なサプライチェーンであることが特徴といえます。トレーサビリティや透明性の確保がグローバルに求められています。
生産時における環境負荷は課題の一つです。コットンなどの天然繊維においても栽培時の水消費、化学肥料による土壌汚染などで環境に負荷がかかっています。また大量の農薬を使って作られた場合は、環境破壊だけでなく生産者の健康被害も問題となります。一方でポリエステルなどの合成繊維の場合は、石油資源の使用、工場でのCO2排出などの環境負荷が発生してしまいます。原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷は服1着あたりCO2排出量25.5kg=ペットボトル(500ml)約255本製造分、水消費量約2,300l=浴槽約11杯分にもなります(参照、環境省HP)。
過度な価格重視主義による大量消費
以前Money for Goodでインタビューした鎌田安里紗さんは過度な価格重視主義に違和感を覚えたとおっしゃっていました(2022年12月27日:未来につなぐ消費とは?鎌田安里紗さんと“エシカル消費”を考える)。生活者としては手頃な価格で購入できることは嬉しいことですが、一方で衣服のライフサイクルの短期化、大量生産・大量消費の拡大による大量廃棄が懸念されています。実際1年間で1回も着られていない服が一人あたり25着もあるといわれています。
リサイクル問題
1年間一度も着用されない服が一人当たり25枚ある一方で、1年間で手放される服は約12枚となっています。フリマアプリや店頭リサイクルに出しているという方もいらっしゃるとおもいます。しかし現実には68%が可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄されています。廃棄される大量の衣服を処理するためにも、環境負荷が生じています。中古服としての再流通や回収段階での課題に加えて、洋服は様々なパーツで構成されているため、資源としてリサイクルがしづらいという課題も抱えています。
各企業の取組
このようにさまざまな課題を抱えるアパレル業界ですが、多くの企業が持続可能な社会実現に向けて積極的に取り組んでいます。記事内の「#ふやす」は投資を通じて応援できる上場企業です。
ゴールドウイン
#ふやす #かう・つかう
「NORTH FACE」などのブランドを有するスポーツウェア大手。2021年5月、10年先を見据えた長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」を策定し、企業成長と地球環境の改善を本格的に目指すことを宣言しています。同社は「グリーンデザイン」を推進しており、環境負荷が低く再生可能な原材料を使用した製品開発を行うなど環境面の取り組みをリードし進化し続けています。2030年度までに環境負荷低減素材の使用製品比率を90%以上にする目標を掲げているほか、ファッションロス・ゼロを目指して、製品や材料の廃棄を出さない循環型社会の実現も進めています。またゴールドウインでは株主優待制度を活用して寄付を行うことができます。
<海洋汚染の原因のひとつである海洋プラスチックごみ>海の産業廃棄物である漁網から生まれたリサイクルナイロンを使用した「FISHAND」シリーズを発売(2022年11月10日PR)
製品のロングユースを推奨し、まだ使えるウエアの廃棄を削減することを目的にGoldwinブランド製品の修理代を無料に(2022年12月15日PR)
アシックス
#ふやす #かう・つかう
競技用シューズ最大手。スポーツ用品全般を扱う。サプライチェーンを巻き込んだサステナビリティへの取り組みを加速させている点が印象的です。2017年からサプライヤー/工場のリストを公開・毎年リストを更新しており、アシックスの基準に照らし合わせた生産委託先のモニタリングを継続的に実施するなど、透明性の高いサプライチェーン管理を実施しています。また、繊維廃棄物でできたリサイクル糸を採用したシューズ「EarthDay Pack」の販売など循環型ビジネスモデル実現にむけて積極的に取り組んでいます。
1.95kg CO₂eのカーボンフットプリントを実現 温室効果ガス排出量が最少のスニーカーを開発(2022年9月16日PR)
スポーツスタイルカテゴリーから豊田合成株式会社のエアバッグ生地を再利用した「GEL-SONOMA 15-50」を発売(2023年1月19日PR)
グンゼ
#ふやす #かう・つかう
肌着メーカー。2019年12月に「プラスチック資源循環基本方針」を制定し、プラスチック容器やラベルの再生を促進し、資源循環に取り組む方針を示しています。海洋プラスチック問題の深刻化、プラスチックに対する規制強化の流れから、プラスチックフィルム包装材料などを製造販売している社会的責任を果たすために、リサイクル対応新オレフィン系収縮フィルム「GEOPLAS」の発売など環境に配慮した製品開発を強化しています。
エシカルソックス「WASHIITO」を販売。使用する「和紙」繊維は原料に森林管理された針葉樹の廃材を使用した、環境にやさしいソックス(2022年11月7日PR)
環境に配慮した収縮フィルム、オレフィン系グレード「GEOPLAS (R) FRG」を販売開始!市場普及を進め、収縮フィルムの新たな資源循環型社会を目指します(2022年1月31日PR)
バロックジャパンリミテッド
#ふやす #かう・つかう
「MOUSSY(マウジー)」などを展開するアパレル企業。サステナビリティの重点テーマに環境・社会・人を掲げています。環境においては、作りすぎないものづくりの実現、資源の有効活用と再利用に取り組んでいます。
わたしたちにできることは?
鎌田安里紗さんが共同代表理事を務める、一般社団法人unistepsは企業・行政、生活者、デザイナーとの取り組みを通して、多方面からファッション産業の構造や意識の変革を後押ししています。サステナブル・ファッション オンライン講座も提供していて、ファッション産業の基本構造から、サステナブル・ファッションに関する網羅的なトピックや現状の課題、グローバルな動きまでを体系化して情報提供しています。また環境省のウェブサイト「サステナブルファッションーこれからのファッションを持続可能に」では、ファッションと環境へのアクションとして、明日から私たちが生活者として取り組めるアクションがわかりやすくまとめてあります。
まずはできる一歩から
アパレル業界はわたしたちにとって身近な業界であり、そして生活者として取り組めることが沢山あります。皆さんの一歩が重要な業界ともいえます。購入する際に本当に必要か、大切にできる服か考えてみる。環境負荷が小さい素材を選んでみる。手放すときはリサイクルにもっていく。あなたのできる一歩を踏み出してみましょう。
記事内で「#ふやす」は投資を通じて応援できる上場企業です。3月10日付のサステナブル・ラボの執筆記事では「アパレル業界のサステナビリティ経営優良企業」と題し、企業のサステナビリティ貢献度を独自に分析・数値化したランキングを紹介しています。合わせてご覧ください。
「Money for Good」では、お金の流れで社会課題の解決を目指しています。社会も、自分自身の生活も持続可能なものにするために、日ごろから小さなできることを積み重ねていく。社会を良くしようとしている企業を応援してみる。あなたのできる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
マガジン「見える! ESG/SDGs」ではMoney for Goodとサステナブル・ラボが共創し、社会課題や企業の取り組みを、具体的な事例(定性的な情報)とデータによる可視化(定量的な分析)の両面から取り上げ、ESG/SDGsの一つ一つの課題を「見える化」していきます。
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