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投資はパワフルな行動。個の力を信じるmymizuロビン・ルイスさんに聞く、いい循環を起こすムーブメントのつくり方

エコバックと並び利用する人が増えたマイボトル。飲み物を持ち歩くことで、ペットボトル入り飲料などを買わないで済みます。では出先で飲み切ってしまった時は、どうしていますか?

2019年に誕生した日本発の給水プラットフォーム「mymizu(マイミズ)」は、無料の給水場所を検索できるスマホアプリです。水道がある公園など公共施設に加えて、mymizuのコンセプトに賛同したカフェやレストラン、ホテルなどの商業施設も「給水パートナー」として登録されています。その数は全国で約1万2千箇所。出先でマイボトルが空になっても、mymizuで検索して最寄りの給水所に行けば、手持ちのマイボトルを満杯にすることができるのです。

mymizu共同創設者であるロビン 敬 ルイスさんは、プラスチックボトルの削減や海洋汚染の問題解決と合わせて、mymizuの活用が目指すビジョンを「みんなで未来を共創すること」だと教えてくれました。

ロビン 敬 ルイスさんのプロフィール
日本初の無料給水プラットフォーム「mymizu」の共同創設者。エジンバラ大学国際ビジネス学修士課程卒業後、母方のルーツである東北にて東日本大震災の被災地ボランティアとして4ヶ月間滞在。国際NGOをはじめとする国際機関や社会的企業にて、サステナビリティに関する国際事業、自然災害による人道支援活動などを経験。2017年、日本において世の中の深刻な課題に取り組む人やビジネスを増やすため一般社団法人Social Innovation Japan を立ち上げ、イノベーション創出から、循環型社会を目指す企業へのコンサルティングや人材育成サービスを提供。


ペットボトル削減の先を見たビジョン


-mymizuを立ち上げる前から、海洋汚染やプラスチックボトルの削減方法を考えていたのですか?

プラスチックゴミだけではなく、社会が良くなる解決策をもっと増やしたい、という思いはずっと自分の中にありました。NGOや国際機関での仕事を通して海外で過ごすことも多かったのですが、アフリカやカリブ海などの国際開発の場では、テクノロジーを活かした斬新で画期的な解決策を目にする機会がありました。日本にもごみ拾いSNS「ピリカ」などがありますが、もっとたくさんの解決策があってもいいはずだと思っていたんです。

そんな思いを抱えている時期に訪れた沖縄で、きれいな浜辺の一角にゴミがたくさん溜まっているのをみました。その大半がペットボトルだったこともあり、まずはペットボトルの削減にアプローチしようと思ったんです。それをいかにクリエイティブに、且つイノベーティブにするにはどうしたらいいかを時間をかけて考えました。というのも、僕は別にただアプリを開発したいわけでも、プラスチックを世界の悪者にしたいわけでもなく、ムーブメントを作りたかったからです。
 
私たちが暮らす社会では、一人ひとりに必ず影響力があり、もし誰かがペットボトルを減らすことができたら、その人から波及する良い影響が他の誰かに必ず起こります。そうしたエンパワーメントをたくさん起こす仕組みを作るために、多くの人を巻き込んで、みんなで一緒に結果をつくりたい。mymizuを始めた当初からそう考えていました。

小さなアクションが大事な理由

-mymizuには、ペットボトル削減よりも大きな目標があったんですね。

もうひとつ考えていたことは、環境問題を「遠い問題にさせたくない」ということです。日本は諸外国に比べて街は整備されているしゴミも少ないし、素晴らしいところがいっぱいある国なので、環境問題をどこか遠いところで起きていることだと勘違いしてる人もいる気がします。そういう人にCO2排出量とかメタンガスなどの話をしたら、さらに遠くに感じてしまうでしょう。実はとても身近な問題だったと気づいてもらうためには、3歳だろうと90歳だろうと誰でもできるくらい簡単で、手軽な行動が解決につながる、そんな仕組みを作りたいと思っていました。

東日本大震災の直後、東北でボランティア活動をしていたんですけど、ひとりでガレキ撤去してもほんの少ししか変わらない、でも100人、200人という人が集まって行動したら2〜3時間でその場が大きく変わりました。それと同じように、たくさんの人の小さなアクションを集めることで、社会に大きなインパクトを起こせると信じています。ビジネスの場で「共創」という言葉が使われることが増えましたが、僕もこの言葉を信じているんです。みんなで未来を共創するって、とても強い概念ですよね。

mymizuの4年間を振り返って

-mymizuは誕生からまもなく4年が経ち、今も拡大を続けていますね。

おかげさまでユーザーはすごく増えました。当初多くのユーザーは、サステナビリティへの関心からアプリを使ってくれているようでしたが、最近は節約のためにmymizuを使っている人も増えてきて、僕はこれをすごくいいことだと考えています。

mymizuではアプリを使ったことによる3つの影響力を数字で見える化しています。ひとつはペットボトルの削減本数、もうひとつはCO2の削減量、そして無料の給水でどのくらいのお金が節約できたか、という金額です。プラスチックやCO2の削減はもちろん大切ですが、世界のインフレなどを考えると、日常的な節約もとても大切ですよね。

また昨年は、mymizuのウェブアプリを公開することもできました。これにより、スマホアプリをダウンロードしてない人も、好きなブラウザで世界の給水所を検索できるようになりました。オープンソースですので、ウェブサイトの開発技術がある人なら誰でもページの更新や改善ができる仕組みをつくっています。またひとつの共創のかたちを実現できたことがとても嬉しいです。

ロビンさんに学ぶ、お金を使う時のポイント

-普段使うお金について、どのような価値観をお持ちですか?何かを買う時、または投資する時、そして寄付をする時について、それぞれどんなことを大事にしてるか教えてください。 

基本的には物よりも体験が大事だと思っています。例えば少し前、3人のかわいい甥っ子たちと遊ぶためにドイツに住む家族を訪ねたのですが、こんなに円安の今、すごくお金が掛かるんですよ(笑)でも大切な人たちと過ごすかけがえのない時間のためにはお金を使うことも必要だと考えています。

買い物に関しては、まず本当に必要なものかどうか、よく考えますね。よくよく考えた上でやっぱり買う場合、サーキュラーエコノミー的に考えて、新品ではなく中古で買えないだろうかと考えます。あるいはできるだけローカルのお店やレストランを優先したり、家族経営などの小さなビジネスモデルを応援するような買い物も心掛けています。

投資先の見直し。環境効果は27倍に

投資に関しては思うことがいろいろあります。なぜなら投資は社会変革を起こすツールとして、とてもパワフルだと思うからです。イギリスでは数年前から、「Make My Money Matter(略称MMMM)」というキャンペーンが始まりました。これは、投資や年金基金などの影響力がいかに大きいかを伝えるもので、投資先にもサステナビリティを考慮するよう呼びかける運動です。彼らの調査では、年金基金をサステナブルな投資先に変えることでCO2排出量の削減に貢献でき、計算上では、飛行機を使わないこととヴィーガンになることを合わせたよりも27倍のCO2削減効果があるそうです。

いろんな考え方があるとは思いますが、こうした運動は世界各地で起きていますし、自分の年金基金がどのように使われているかを気にすること、そして実際に問い合わせしてみることはとても大事なアクションだと思います。MMMMも、最初はイギリス人の年金がひとりにつき約3000ポンド(約55万円)も化石燃料に投資されているとわかったことで始まった運動でした。

僕自身もESGファンドに一部投資していますし、企業で講演をさせてもらう時などは、投資先を見直す重要性もお伝えしています。もしもこれから投資を始める人は、少額でもESGファンドを始めてみることを勧めたいですね。

それと投資って、別にお金だけの話ではないと思います。もしも今は投資できる余裕がない場合、誰かの活動のお手伝いやゴミ拾いなど、自分の時間を使った貢献もとても重要だと思います。

-普段から良く使っているサービスや応援している企業はありますか?

中古品を探す時はメルカリをよく使いますね。あとテラサイクルが世界中で展開しているLoopも使います。イオンなどの大手スーパーと共同して、使い終わった商品の空容器を回収、洗浄、そして再利用する循環型の買い物ができるシステムです。あとmymizuのチームメンバーなどに贈り物をする時は、ovgo Bakerでクッキーを買うことが多いですね。オーガニックでヴィーガン、グルテンフリーの焼き菓子がすごくおいしいので、喜ばれるんです。Loopもovgo Bakerも、B Corp認証を取得しています。

あと今度利用したいと考えているのは、食品ロスを削減するKuradashiです。Kuradashiで買い物をすると、同時に寄付もできて社会貢献につながる仕組みが素晴らしいと思いました。また、個人的にはスポーツが大好きなので、日焼け止めを買う時はサンゴ礁を傷つける紫外線吸収剤などが使われていないかどうかも確認するようにしています。

あともう一つ、ひとりの顧客あるいは消費者として大事だと思うことは、企業にフィードバックすることです。例えばプラスチックではなく紙のパッケージに変わったことが素晴らしいと思ったらそれを伝える、もしくは逆に、もっとこういうものにして欲しいと思うことがあったらそれも伝える。買い物は投票であり、同時にコミュニケーションでもあるので、企業にしっかりと自分の声を届けることもとても大事だと思います。

お金の役割が、社会を良くする仕組みとなるために

-最後に社会起業家としてお聞かせいただきたいのですが、社会を良くするお金の循環はどうしたら作れると思いますか?

まずは買い物を減らすことが必要です。日本に限りませんが、30〜40年前は、消費することが美徳とされ、どんどんお金をつかってGDPを高めることが豊かな社会づくりだと言われていました。でも今はその考えを改める必要が出てきています。買いものを続けた結果、社会は今とても危険な方向に向かっていると思うんです。

ネイティブアメリカンの教えに「The seventh generation principle」(7世代の原則)と呼ばれる考え方があります。未来に生きる7世代先への影響と、過去の7世代前を生きた人たちの気持ちを想像して、今の行動を決めるという価値観です。日常の買い物で毎回そこまで深く考えることは難しいかもしれませんが、少しでも未来への影響を想像できたら、より良い選択ができるはずです。

自分のお金が社会にどのような影響を生み出すのか、一歩立ち止まって考える習慣をつけることが、お金による社会の好循環をつくるきっかけになるのではないでしょうか。

編集後記

一人ひとりがもつ影響力を信じている、と共創の魅力を語るロビンさんのお話を聞いていると、社会に対する希望が湧いてくるようでした。しかしロビンさんもかつては、成長だけを是とするビジネスの在り方に疑問をもったこともあるそうです。

そこで、同じように経済と社会課題のバランスに疑問を感じている方へアドバイスをお願いすると、「過去の経験を振り返り、課題を見つけると良い」と教えてくれました。実はロビンさん自身、マイボトルを持っていても給水場所が見つけられず、周囲を気にしながら公の水道水やお手洗いの水を使った経験がおありなんだとか。「過去や日常生活の中で不便と感じるのはどんなことか、と考えると大きなヒントがあるはず。人は生まれながらにして問題解決をする力があるから、ピンチをチャンスに変えてほしい」と、力強い言葉をくれました。

取材・文:やなぎさわまどか
企画・編集協力:ハーチ株式会社・IDEAS FOR GOOD編集部

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