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いま注目の女性活躍!

この記事は2023年6月30日に日興フロッギーに公開された「いま注目の女性活躍!」を一部編集し、転載したものです。

最近、ニュースで「女性活躍」という言葉をよく耳にします。今年6月上旬には、日本政府から男女共同参画の推進に向けた重点方針である「女性版骨太の方針2023」の原案が示されました。また今年はG7が日本で開催されたこともあり、男女共同参画・女性活躍は重要な論点の一つです。

G7:
フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議長国順)の7ヵ国及び欧州連合(EU)が参加する枠組です。 G7の会議には、G7メンバー以外の招待国や国際機関などが参加することもあります(参照:外務省ウェブサイト)。

そこで今回は、そもそもなぜいま女性活躍が注目されているのかをひも解きます。さらに女性活躍という点から注目の企業をとりあげて、具体的な取り組みを紹介していきます。

なぜ女性活躍が注目されているの?

昨年4月、女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が改正されました。

この法律は、仕事で活躍したいと希望するすべての女性が、個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目指して2015年8月に成立し、昨年からは対象となる企業が拡大され行動計画の策定も義務化されました。冒頭でもふれた「女性版骨太の方針」を推進するための法律でもあります。

そもそも、なぜこの女性活躍推進法が制定されたのでしょうか。その背景には、大きく分けて2つの要因があります。

①良いとは言えない職場における女性の雇用環境

②人口減少と少子高齢化がもたらす労働力不足

①良いとは言えない職場における女性の雇用環境

国内には、働きたいという希望を持っていても就業していない女性が約300万人います。また、指導的地位に占める女性の割合が日本は先進諸国を大きく下回っているなど、「女性の力」が必ずしも十分に発揮されていません。

そうした中で、この法律は女性の働く意欲を実現につなげ、ひいては日本の持続的成長を実現し、活力ある社会を維持していくことを狙いとしています。

もちろんこれまでも、男女間の賃金格差是正に向けた同一労働同一賃金の推進、長時間労働の削減、育児・介護休暇等の取得促進、女性リーダーの育成促進などが進められてきました。

またコロナ感染症の流行以降の骨太の方針においては、テレワークの推進、ひとり親に対する職業訓練、コロナの影響による男女間の賃金格差も含めた経済的格差や非正規雇用の賃金問題の再燃などへの課題解決に向けた取り組みがおこなわれてきました。

しかし、それでもまだ「よいとは言えない」職場における女性の雇用環境が課題となっているのです。

②人口減少と少子高齢化がもたらす労働力不足

下記のグラフは、日本の将来人口を推計したものです。これを見ると、なんといまから約50年後の2070年には、日本の総人口は現在の1億2,615万人(2020年時点)から約7割程度の8,700万人まで減少するとされています。

また、総人口が減少する一方で、65歳以上の高齢者人口は増加し、高齢者の割合をあらわす高齢化率は2020年の28.6%から2070年には38.7%と約4割程度までに上昇すると試算されています。今にも増して日本における高齢化が進んでいくことになります。

そうすると、日本社会全体を支えている働く人々はどうなのでしょうか。この働く人々の数を生産年齢人口(15歳~64歳)といいますが、この生産年齢人口は2020年の7,509万人から2070年には4,535万人に減少すると試算されています。国としても労働力を確保することは喫緊の課題となっています。

出所:厚生労働省 第3回社会保障審議会年金部会 資料3 将来推計人口(令和5年推計)の概要

では、女性の就労状況はどうなのでしょうか。内閣府 男女共同参画局が毎年6月に発表している「男女共同参画白書 令和3年版(I-2-1図 就業者数及び就業率の推移)」によると、女性の就業者数および生産年齢人口(15歳~64歳)の就業率の推移は、2020年では就業率が70.6%と2000年の57.0%と比較して大きく伸びています。

また、「男女共同参画白書 令和4年版 女性が職業を持つことに対する意識の変化」を見ても、女性が職業を持つことに対する意識の変化も、過去20年前と比較して男女ともに大きく変化しています。特に、男性・女性ともに「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」という項目において賛同する割合が大きく増えていて、今では女性が職業を持つことは、より自然なことになってきています。

女性活躍に優れた上場企業「なでしこ銘柄」

経済産業省は、東京証券取引所と共同で2012年度より「女性活躍推進」に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定しています。

11年目となる2022年度(2023年3月選定)では、調査内容、評価ポイント等を一新し、17業種から各業種1社ずつ、合計17社を選定しています。

リニューアルされた選定ポイントでは、女性活躍推進に関する取り組みを自社の経営戦略の中でどう位置付け、その取り組みの成果をどのように企業価値に繋げているかという点を重視しています。

これは、女性活躍の推進に優れた企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に対して魅力ある銘柄として紹介することで、企業への投資を促進し、ひいては各企業の取り組みを加速化していくことを狙いとしているからです。

出所:経済産業省 令和4年度「なでしこ銘柄」


では、この中から、女性活躍を推進するために経営トップ層を含めた組織全体やグループ企業一体となって取り組んでいる企業の一例として2社ご紹介しましょう。

味の素、女性管理職比率40%へ

味の素 は、ワークライフバランス向上のためのプロジェクトの中で、女性が活躍できる環境づくりに取り組んでいます。

≪施策の例≫
・コアタイムなしのフレックス
・テレワーク勤務の導入
・退社時間を16時30分に変更

2017年には「ダイバーシティ推進タスクフォース」を設置し、女性人財の育成委員会を設立。ワークライフバランス休職(海外転勤帯同休職や不妊治療休職)の拡大や、事業者内保育所や提携保健所の整備などをおこない、育児中の女性が働きやすい環境づくりを整備してきました。

2019年5月には、よりいっそう女性の登用を促進しつつ、その取り組みを社会に還元し社会全体の変革に貢献することを目的に「30% Club Japan」に参画しました。

出所:味の素ウェブサイト

30% Club Japan:
30% Club とは2010年にイギリスで設立された女性活躍を推進する世界的キャンペーン組織で、「取締役会を含む重要意思決定機関に占める女性の割合」を「30%」まで高めることを目標としている。2019年に日本で発足、メンバーはTOPIX100(東証株価指数の上位100社)と、Mid400(TOPIX100に次ぐ中型銘柄400社)の企業が中心となっており、特に日本では大学や政府関係者なども参加。

その取り組みの一貫として、2020年に女性のキャリア形成機会の提供を目的に「AjiPanna Academy」をスタート。女性従業員にキャリアワークショップ、カレッジ、メンタープログラム等を実施しています。

これらのほか、入社1~5年目程度の若手女性従業員が参加して社長と意見交換する対話会や、思い込みの枠を外しD &Iを推進させるための「アンコンシャス・バイアス研修」を、経営メンバーをはじめとして全社員に展開する取り組み等も実施しています。これらの取り組みの成果として、従来男性のみであったポジションへの女性の登用が進んでいます。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン):
「多様性」を意味するダイバーシティと、「包括」や「包含」を意味するインクルージョンから、「多様な人材を受け入れ活かすこと」を意味する

このように、味の素においては育児中の女性が働きやすい環境の整備のみならず、意識改革研修などを通した経営トップ層と一体となった女性活躍が推進されています。

2023年2月28日に発表された中期経営計画における「中期ASV経営 2030ロードマップ」においては、2030年にグループ全体における女性管理職比率を40%とすることを目標として掲げています。

三井不動産、グループ企業一体となって女性活躍を推進

三井不動産グループでは、グループ内企業横断で定期的にダイバーシティ&インクルージョン推進会議をおこなっています。

グループ内の企業から「女性活躍推進モデル会社(女性活躍推進の取り組みが進んでいる会社)※1」と「女性活躍推進主要会社※2」を設定して、各社の目標および施策の進捗について計13社で話し合う会議やグループ合同研修・交流会を定期的に実施し、グループ全体として女性活躍推進に取り組んでいます。

※1: 女性活躍推進モデル会社:サンライフ・クリエイション、三井不動産商業マネジメント、三井不動産ホテルマネジメント
※2: 女性活躍推進主要会社:三井不動産レジデンシャル、三井不動産リアルティ、三井ホーム、三井不動産レジデンシャルサービス、三井不動産レジデンシャルリース、三井デザインテック、三井不動産ビルマネジメント、三井不動産ファシリティーズ、東京ミッドタウンマネジメント

グループ合同研修「つながる・成長するプロジェクト」 出所:三井不動産ウェブサイト

女性活躍推進においては、以下の2つの軸を重視し、これらを達成するために具体的な8つの施策を策定し、グループ一体となって取り組んでいます。

また、女性従業者が柔軟に働けるよう、事業所内保育所の開設や、短時間勤務におけるフレックスタイムの活用、再雇用制度の充実などの環境整備を行うと同時に、キャリア形成や能力開発について、人事部や上長と面談し、話し合う機会を制度としてもうけて、女性活躍を推進しています。

今回ご紹介した企業の取り組みのように、日本の企業においては、経営トップ層と従業員との対話やそれらを通じた経営トップ層自身の意識改革、会社全体およびグループ全体で女性活躍推進に向けた体制の整備が進んでいます。

近年では、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上へつなげる「人的資本経営」への注目が高まっています。

今後は企業においては、女性活躍を経営戦略の中にどのように位置づけ、戦略的に取り組みをおこない、企業価値向上の成果に結び付けていけるかが期待されています。

著者 : SMBC日興証券 サステナブル・ソリューション部、 岡田 丈
引用元:日興フロッギー

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